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11月のその午後は、すばらしく、明るく、晴れていた。風はなく、海は、銀の鏡のように光り輝いていた。地平線上には、丸く大きな太陽が、入日の輝かしい光を放ちながら、輝いている海に沈もうとしていた。
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この夕暮れの静けさの中を、船は、巡礼者たちの歌声を響かせながら、まさに沈もうとしている太陽の方へと、真直ぐに静かにすべって行った。遠くはるかに、もう、ベニスの輪郭が見え、聖マルコ教会のすらりとした高い鐘楼と百を数えるその都の教会の塔が、夕暮れ時の、この世のものとは思えないほどの美しい光を浴びて、はっきりと目に入った。
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巡礼者たちは、甲板につめかけて、自分のよく見慣れている都、毎日どんよりと曇っている陰うつなベニスではなく、目の前に天から降ってきたような光り輝く壮麗なエルサレムに向かって行っているかのような錯覚にとらわれていた。
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そして神のご保護を感謝し、心から神に賛美をささげ始めた。海賊の手から逃れさせてくださった神。二隻の船のような難船からお守りくださった神、心は、頂いた種々の恵みへの感謝に満たされ、霊魂は、いろいろなものを、目で見、体で経験して、豊かになっていた。主のみ名は、永遠に賛美されますように!(ただ愛さえあるならば 抜粋より)